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夢が教えること。 2011.06.10更新
最近、夢をよく見ます。
とても現実感があって、夢の中で “ あ、これは夢だから戻らなくては。”みたいな感覚があるのです。
疲れていると言えばそれきりですが、学問体系に言うところでは、これは明晰夢といって脳が半覚
醒の状態で眠ると起こることだそうです。映画の、インセプションやトゥルーマンショーみたいですね。
私の明晰夢は今に始まったことではなく、思春期を過ぎたあたりから、現実感のある夢を見る事が
しばしばありました。そして、夢の内容は現実にありそうな事を教えてくれたりもするのですから、馬
鹿にできません。
少し前に、仲の良かった大学時代の友人達と、一泊旅行へ行ったときの話なのですが、理性的で
割と色んな学問に通じているTと、どちらかというと大人しく、温厚な性格のK。2人の友人を誘って、
卒業して何年かぶりの再会でした。ひとしきり懐かしい話に花を咲かせたその日の夜、3人では少
し広すぎるくらいの床の間に布団を並べて、私は普段はあまり人に話した事のない夢の話、そして
明晰夢とやらについて物知りのTに聞いてみることにしました。
Tは、何でも無いと言う風に、「それは脳で思考と意識、記憶に関わる前頭葉が海馬と連携して覚
醒していた時、つまり起きてから眠るまでの今日一日の情報を整理するために起こっているだけの
こと云々・・・。」など話しをしてくれました。なるほど、Tらしい答えだと思いながらも、何故か私の心
はぼんやりと納得がいきませんでした。もし、それがただ単純に今日一日の記憶や意識を整理する
ためだけに起こるのだとしたら、あの夢は何だろう。実際に、デジャヴュ(既視感)のように“ あぁ、夢
で見たことはこのことだったのか。”と思い感じる気持ちは何だろう、そんな思いを巡らせていました。
折しも、今まで夢うつつにTと私の話に耳を傾けていたKが突然に沈黙を破り、おもむろに話しだし
たのです。「以前、“夢は現実への大切なメッセージだから、眠る前には枕元にペンとノートを置いて、
寝惚けていても夢で見たことはきっちり書き記しておいた方がいい。それが毎日の重要な手がかり
になる。”ということをうちの姉ちゃんがテレビでみた。」と、いつになく真剣な表情のまま寝返りをうち、
こちらを向きました。普段では、こういったジャンルのことになると殊更、多弁ではない彼のことだけ
に不意を突かれ、ふたりとも低い声で頷いてしまいました。そして私は何より明晰夢や、夢でみる予
知的な可能性を擁護してくれそうな彼の言葉に、少なからず期待したのです。
そんな気持ちを余所に、Kは「俺はね、そんなことをすればかえって眠りが浅くなるから、よせと言っ
たんだけど・・・次の日の夜にはテレビの文句通りに、姉ちゃんは枕元にペンと紙切れを置いて眠っ
たんだ。」と、神妙な顔つきで続けました。
Tと私は、乾いてくる喉に唾気を押し込みながら、まるでちょっと怪談小咄を聞いているような錯覚を
覚えながら、いつも無口なKの声に耳を傾けていました。
「それで・・・朝、何か書いてあったの・・・?」
しびれを切らしたTは、話し終わるのを待たず、布団で半分程まで顔を覆った彼を覗き込みました。
「うん。」 Kは更に重たく続けました。
「勿体ぶるなよ、なんて!なんて書いてあったの!?」
怖いもの見たさ、聞きたさもあったのでしょう。そう言う私の目はもう完全に醒めてしまいました。
私達2人の反応が予想外だったのか、Kは目をくりくりっとさせた後、やっとのことで口を開きました。
「とっ・・・、ところ天。」
「そ、それだけ書いてあって・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
私達2人は、涙目になりそうなKと、もはや会ったこともない彼の姉ちゃんをそれ以上責める気には
なれませんでした。
そして、ただただ夢の謎は深まるばかり・・・です。

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